ヒト血漿プロテオーム解析における再現性:SomaScanTM AssayとOlinkの比較
Rooney MR et al. Clin Chem. 2025 Jun 3;71(6):677-687. doi: 10.1093/clinchem/hvaf030.

研究の背景と目的
血漿プロテオーム解析について、近年、測定対象の急速な拡大により、遺伝や疾患との関連解析を含む研究や、バイオマーカーの探索・検証など、幅広い活用が進んでいます。一方、測定項目が増えるほど、同一検体で結果がどれだけ再現するか、また別の測定法とどの程度一致するかを確認しないと、結果の解釈や比較が難しくなります。SomaScanTM AssayとOlinkの最新世代では、十分な比較研究がなされていないため、本研究では血漿における両者の再現性と一致度を評価しました。
研究方法
米国ARIC研究(Atherosclerosis Risk in Communities Study)の参加者102人(2011–2013年の採血時点での平均年齢74歳)の血漿を2分割し、SomaScan 11K Assay(10,778項目)とOlink Explore HT(5,420項目)で相対量を重複測定しました。各項目でSpearman相関と変動係数(coefficient of variation:CV)を算出し、重複する4,443項目はプラットフォーム間相関も評価しました。さらにシスタチンC、N-terminal pro-brain natriuretic peptide(NT-proBNP)、トロポニンTを臨床免疫測定と比較しました。
結果
SomaScan Assayでは、同じ血漿を2つに分けて測った2回の結果を比べると、中央値で相関0.85、CV6.8%でした。また、約99%の項目で、測定値の80%以上が検出限界(LOD)以上であることから、測定が安定していることが示されました。
一方、Olinkでは、同様の2回測定の比較で中央値の相関は0.65、CVは35.7%でした。さらに、LOD未満の値が多い項目ほど精度が低く、検出されやすいほどCVが小さくなるという強い関係が見られました。そこで感度解析として、LOD未満の値を一律にLODの半分(低濃度域の代表値)に置き換え、LOD未満のばらつきが指標を過度に悪化させていないかを確認すると、中央値の相関は0.79に上がり、CVは13.3%まで下がりました。
両者で重なる4,443項目の一致度は全体として高くなく、中央値の相関は0.14でしたが、相関0.8付近にまとまりが見られるなど、よく一致する項目も存在し、相関0.8以上は約1割でした。臨床免疫測定との比較では、シスタチンCはSomaScan AssayとOlinkのどちらでも高い相関を示しました(SomaScan Assay r=0.92、Olink r=0.93)。一方でトロポニンTは結果が分かれ、SomaScan Assayでは臨床免疫測定途中程度の相関が見られたのに対し(r=0.70)、Olinkでは今回の対象者でLODを上回る測定値が0%で、臨床免疫測定との相関もほぼ得られませんでした(r=−0.03)。
考察
本研究では、「測りやすさ」を検出限界(LOD)を上回る割合、「精度」を同一検体を2回測定した結果の相関(Spearman)と変動係数(CV)、「一致度」を両プラットフォーム間の相関として評価しました。ARIC由来の102例の血漿検体で、SomaScan Assayは2回測定の中央値がr=0.85、CV=6.8%と高精度でした。Olinkはr=0.65、CV=35.7%とばらつきが大きく、LOD未満の値が多い項目ほど精度が低い傾向が示されました。さらに両者で重複する4,443項目のプラットフォーム間相関の中央値はr=0.14(r≥0.8は約1割)であり、血漿中での検出性とLOD未満値の扱いが精度と一致度を大きく左右すると考えられます。
COI:本記事は、SomaLogic社(現、イルミナ社)がアッセイを無償提供した研究報告をもとに作成しています。フォーネスライフ社はSomaScan Assayを提供・販売する立場にあるため、本記事の掲載は利益相反に該当します。


