血漿プロテオームを用いた椎間板変性症予測パネル
Zhou Z et al. J Proteome Res. 2026 Feb 6;25(2):812-827. doi: 10.1021/acs.jproteome.5c00754.

研究の背景と目的
椎間板変性症(Intervertebral disc degeneration、IDD)は多くの人にみられ、慢性的な痛みや生活機能の低下につながる重要な健康課題です。一方で、発症や進行に関わる仕組みは十分に解明されておらず、血液で早期に状態を捉えられる指標の探索が求められています。さらに重症度評価には腰椎MRIのPfirrmann分類が用いられますが、評価に手間がかかる点や主観が入り得る点が課題です。そこで本研究は、採取しやすい血漿プロテオームデータから、重症度(grade IIとV)において量が有意に異なるタンパク質を、診断や重症度評価(グレーディング)、進行リスク推定を補助しうるバイオマーカー候補として抽出・検証しました。
研究方法
本研究は南京鼓楼医院で治療を受けたIDD患者を対象としました。重症度は腰椎MRIのPfirrmann分類で判定し、探索集団としてgrade II 10例とgrade V 10例を比較しました(男女は各群5:5、平均年齢はgrade II約25歳、grade V約32歳)。採血後に血漿を分離・凍結保存し、SomaScanTM 7K Assay(v4.1)で多数タンパク質を相対定量しました。差の判定は、grade Vとgrade IIの間でタンパク質量に統計学的な有意差があり、|Fold Change|≥1.2かつp≤0.05を満たすものを抽出しました。
次に独立の検証集団として、別のIDD患者50例(grade II 25例、grade V 25例)の血漿で、変化が大きかった6種(COL6α3、REG1β、ATF5、CAP1、MAGEA4、LILRB3)をELISAで定量し、有意差の再現性を確認しました。さらにELISA値を用い、grade IIとgrade Vを判別できるか(重症度の判別)をROC解析で評価しました。
結果
探索集団の血漿をSomaScan Assayで解析したところ、7,289本のアプタマーにより6,345種類のタンパク質を評価できました。grade Vとgrade IIを比較すると、設定した基準(|Fold Change|≥1.2かつp≤0.05)を満たす、重症度に伴って量が統計学的に有意に異なるタンパク質(=バイオマーカー候補)が208タンパク質(測定ターゲットとしては214件)見つかりました。このうち「上昇107、低下101」は、grade IIに比べてgrade Vで相対量が増えた(上昇)/減った(低下)タンパク質の数を指します。
さらに、変化量が大きい候補としてCOL6α3、REG1β、ATF5、CAP1、MAGEA4、LILRB3の6種を抽出しました。独立の検証集団(IDD患者50例)でこれら6種をELISAで定量したところ、いずれもgrade IIとgrade Vの間で有意差が再現されました。加えて、ELISAで得た6種の値を組み合わせて重症度(grade IIかgrade Vか)を判別するモデルを作成すると、ROC解析でAUC=0.8700となり、単独の指標より高い判別性能が示されました(単独ではATF5が最も高くAUC=0.8672でした)。
考察
血漿プロテオームを網羅的に調べることで、IDDの重症度に伴う変化を血液から捉えられる可能性が示されました。単独よりも複数タンパク質の組合せが予測力を高めた点は、病態が多因子であることと整合します。一方、本研究は単施設・少数例のため、多施設・大規模集団での再現性確認も必要です。
COI:フォーネスライフ社はSomaScan Assayを提供・販売する立場にあるため、本記事の掲載は利益相反に該当します。


