血漿プロテオームから細胞の老化を捉え、将来の疾患リスクを予測

研究の背景と目的
老化の進み方は、全身で一様ではなく、臓器や細胞の種類によって異なります。これまで細胞レベルの老化評価には組織採取などが必要でした。本研究では、血液中のタンパク質を網羅的に測定し、40種類以上の細胞について「生物学的な老化度」を推定できるか、さらに疾患発症や死亡リスクと関連するかを検証しました。
研究方法
3つの大規模コホート、計60,542人を解析しました。SomaScanTM Assayでは最大7,289種類の血漿タンパク質を用いて細胞種ごとの特徴的なタンパク質を抽出し、機械学習によって細胞の生物学的年齢を推定しました。SomaScan AssayによるモデルはGNPCで構築・疾患解析され、NSHDで外部検証されました。さらにUK BiobankのOlinkデータでも再現性を検証しました。
結果
細胞ごとに老化速度が異なり、健康な集団でも約20~25%が1種類の細胞で顕著な老化を示しました。細胞の老化は疾患リスクとも強く関連し、骨格筋細胞の老化が著しい人では、若い状態の人と比べてALS発症リスクが12.7倍でした。また、アストロサイトの老化が著しい人ではアルツハイマー病の発症リスクが大きく上昇しました。APOE4遺伝子型とアストロサイト老化を組み合わせることで、遺伝情報だけでは捉えきれないリスク層別化も可能でした。さらに、喫煙者では呼吸器上皮細胞の老化が肺がんリスクの上昇と関連し、複数の細胞で老化が進んでいる人ほど死亡リスクも高くなりました。
考察
本研究は、血液から細胞レベルの老化状態を推定できる可能性を示しました。暦年齢だけでは見えない「どの細胞がどれだけ老化しているか」を捉えることで、疾患の発症前からリスクを評価し、予防や早期介入につなげられる可能性があります。
COI:開示すべき利益相反はありません。

