肺容量指標で層別化したCOPD予備群の血漿プロテオーム

Zeng S et al. Ann Am Thorac Soc. 2026 Jul 1;23(7):1033-1045. doi: 10.1093/annalsats/aaoag051.

研究の背景と目的

喫煙歴があっても、肺機能検査(スパイロメトリー)では慢性閉塞性肺疾患(COPD、chronic obstructive pulmonary disease)の基準を満たさない人がいます(TEPS:tobacco exposed with preserved spirometry)。TEPSの中でも、CTで測った肺容量(TLC:total lung capacity、FRC/TLC:functional residual capacity-to-total lung capacity ratio)によりCOPDリスクが高い「pre-COPD」のサブタイプが分かれるとされますが、体の中で何が違うのかは十分わかっていません。本研究は、肺容量で分けたpre-COPDが血漿タンパク質の特徴(プロテオーム)として区別できるかを調べました。

研究方法

多施設前向きコホートのCOPDGene研究のTEPS 1,959人(平均64歳、女性53%、現喫煙38%)を対象に、5年後健診に相当する訪問2(V2)の血漿をSomaScanTM Assay(v4.0、4,979アプタマー/4,776タンパク質)で網羅的に測定しました。CT肺容量を年齢・性別・身長・体重で補正し、[TLC]high、[FRC/TLC]high、両方高値、低リスク群に分類しました。共変量を調整した回帰分析で差のあるタンパク質を同定(FDR<0.05)し、機械学習で判別性能(AUC)と重要タンパク質を評価、経路解析で生物学的背景を解釈しました。追跡データのある1,232人では10年後健診に相当する訪問3(V3)の転帰も確認しました。

結果

平均5.3年の追跡で、肺機能検査の基準でCOPDと判定されるCOPDは高リスク群17%(133/761)、低リスク群8%(37/471)に発生し、高リスク群で多いことが確認されました(aOR 2.51)。高リスク内では、[FRC/TLC]highは[TLC]highより症状が強く、運動耐容能が低く、空気の閉じ込めや気道壁肥厚が目立ちました。一方[TLC]highは肺気腫の所見が相対的に目立つものの、症状は少ない傾向でした。
プロテオームでは、[TLC]highと[FRC/TLC]highの比較で差のあるタンパク質が269個見つかりました([FRC/TLC]highで116上昇、153低下)。これらを用いた機械学習の判別AUCは0.83で、臨床情報のみ(AUC 0.73)にタンパク質を加えるとAUCは0.87に改善しました。判別に寄与する分子として、既知のCOPD関連タンパク質(例:sRAGE、SOD3、IGFBP2、CHI3L1、CCL15、WISP1)に加え、新規候補ZG16が強く寄与しました。経路解析では免疫シグナル、細胞の移動、補体・凝固、炎症や細胞死などの経路が示されました。低リスクとの比較では、[TLC]highで252個、[FRC/TLC]highで22個の差分タンパク質が報告されました。

考察

肺容量にもとづくpre-COPDは、将来のCOPDリスクだけでなく、血漿プロテオームでも生物学的に異なる集団である可能性が示されました。特に判別に効くタンパク質の組み合わせは、早期の層別化やバイオマーカー探索に役立つ可能性があります。

Information

本研究ではSomaScan Assayが、1,959人規模で数千タンパク質を一括測定し、表現型間の違いを網羅的に抽出する中核手段でした。既知分子(sRAGE等)と新規候補(ZG16)を同時に見いだせる点が、早期COPDの層別化やバイオマーカー探索に有用です。なお、フォーネスライフ株式会社では、最大約11,000種類のタンパク質解析が可能なSomaScan 11K Assayも提供しています。

COI:フォーネスライフ社はSomaScan Assayを提供・販売する立場にあるため、本記事の掲載は利益相反に該当します。

SomaScan Assayのことを短時間に理解できる資料を用意しました。