プロテオーム加齢時計は長期がんサバイバーの予後を捉えられるか
Wang S et al. J Natl Cancer Inst. 2026 Jan 1;118(1):102-112. doi: 10.1093/jnci/djaf286.

研究の背景と目的
長期がんサバイバーが増えています。一方、がんサバイバーでは生物学的な老化が進み、死亡リスクが高まる可能性があります。本研究では、血漿タンパク質の情報から生物学的年齢を推定するプロテオーム加齢時計を作成し、推定年齢と実年齢の差と死亡リスクの関連を調べました。
本研究では、VRL患者の硝子体液を網羅的にプロテオーム解析し、VRLで特徴的に変化するタンパク質や生物学的経路を明らかにするとともに、DLBCLで知られる分子学的特徴が眼内環境にも反映されているかを検討しました。
研究方法
米国の前向きコホートARICとMESAを解析しました。ARICのがんのない参加者から無作為に選んだ2,466人のデータで、619種類のアプタマー(613種類のタンパク質)を用いたCaPACを構築しました。これを長期がんサバイバー(がん診断から採血まで2年以上)と、がんのない参加者に適用しました。推定年齢と実年齢の差を「年齢加速」とし、死亡リスクとの関連を解析しました。MESAでは全死亡との関連を検証しました。
得られたデータからVRL群と対照群で量の異なるタンパク質を抽出し、Gene Ontology、Reactome、GSEAなどを用いて、それらが関係する生物学的機能や経路を解析しました。
結果
ARICの長期がんサバイバー806人では、年齢加速が大きいほど全死亡リスクが高く、1標準偏差上昇あたりのハザード比は1.42でした。MESAの154人でも同様で、ハザード比は1.62でした。
ARICでは、年齢加速が大きいほどがん死亡リスクも高く、ハザード比は1.34でした。一方、心血管疾患死亡との明確な関連は認められませんでした。MESAでは、対象数の制約から、がん種別・死因別の解析は行われていません。
ARICのがん種別解析では、年齢加速は乳がんサバイバーの全死亡(ハザード比1.54)および大腸がんサバイバーの全死亡(1.96)と関連しました。いずれも全死亡との関連です。
がんのない参加者でも、年齢加速は全死亡と関連し、ハザード比はARICで1.50、MESAで1.40でした。CaPACに用いられたタンパク質は、サイトカイン、インスリンシグナル、代謝、がん関連経路と関係していました。既存のプロテオーム加齢時計と比較した全死亡との関連は、おおむね同程度でした。
考察
血中タンパク質から推定した生物学的年齢は、長期がんサバイバーの死亡リスクを捉える可能性があります。CaPACのタンパク質は、炎症、代謝、がん関連など複数の経路と関係していました。ただし観察研究であり、因果関係や臨床利用を示すものではありません。今後の検証が必要です。
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