小児IBDを血清タンパク質で見分けるバイオマーカー探索
Omede M et al. eBioMedicine. 2026 Jun;128:106311. doi: 10.1016/j.ebiom.2026.106311.

研究の背景と目的
炎症性腸疾患(IBD)は、潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)などを含む慢性の腸の炎症性疾患です。診断には内視鏡検査や病理検査が重要ですが、特に小児では負担が大きく、UCとCDの区別が難しい場合もあります。本研究では、血液中のタンパク質を幅広く調べることで、IBDの有無や病型の違いを見分ける手がかりを探しました。
研究方法
小児消化器専門施設を受診したIBD患者と非IBD患者の血清を用い、探索段階ではSomaScan Assayにより1,305種類のタンパク質を測定しました。その後、候補タンパク質をELISAなどの免疫測定法で別コホートにて検証し、複数タンパク質を組み合わせた予測モデルを作成しました。
結果
SomaScan Assayによる探索解析では、IBDと非IBDを区別する95種類の血清タンパク質、UCとCDを区別する70種類のタンパク質が見いだされました。IBDでは、MMP1、MMP3、レジスチン、ハプトグロビンなどが上昇しており、炎症や組織の分解・修復、血管機能に関わる経路が関連していました。8種類のタンパク質を用いたIBD判別モデルではAUC 0.95と高い判別性能を示しました。さらに、MMP1、MMP3、レジスチン、ハプトグロビンの4タンパク質は、295例の検証コホートでもIBDで有意に上昇していました。4タンパク質モデルは、IBD判別でAUC 0.86および0.90を示し、UCとCDを区別する別の4タンパク質モデルも独立検証でAUC 0.93を示しました
考察
本研究は、小児IBDには血液中のタンパク質に特徴的な変化があり、病気の有無だけでなくUCとCDの違いも反映しうることを示しました。現時点では診断法として確立したものではなく、より大規模な前向き研究が必要ですが、将来的に内視鏡など既存検査を補う非侵襲的な検査開発につながる可能性があります

