心不全患者の1年死亡リスクを血漿プロテオームで予測

Chadwick J et al. Circ Heart Fail. 2025 Apr;18(4):e011208. doi: 10.1161/CIRCHEARTFAILURE.123.011208.

研究の背景と目的

心不全は、症状や経過が患者ごとに大きく異なる病気です。従来はNT-proBNPなどの血液マーカーや臨床情報を用いて予後を評価してきましたが、個々の患者のリスク変化をより詳しく捉える方法が求められていました。本研究では、血液中の多数のタンパク質情報を用いて、心不全患者の1年以内の死亡リスクを予測できるかを検証しました。

研究方法

研究では、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)と、左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)を分けて解析しました。3つの独立した研究コホートの血漿検体を用い、SomaScan Assayにより約5,000種類のタンパク質を測定しました。機械学習により、HFrEFでは17種類、HFpEFでは14種類のタンパク質からなる予後予測モデルを作成し、別の患者集団で性能を検証しました。

結果

作成されたプロテオミック リスク スコア(PRS)は、1年以内の全死亡リスクを予測できました。HFpEFでは、PRSの予測性能はC-index 0.79、AUC 0.82で、従来のMAGGICスコアやNT-proBNP単独よりも高い性能を示しました。HFrEFでは、PRSはMAGGICスコアと同等の性能を示し、NT-proBNP単独よりもC-indexで有意に優れていました。
また、低リスク・中リスク・高リスクに分類した場合、1年死亡率はHFrEFでそれぞれ1.3%、9.3%、27.4%、HFpEFで0%、2.5%、13.3%と明確に分かれました。さらに、経時的に採取された血漿を解析すると、死亡に至った患者ではPRSが高く、時間とともに上昇する傾向が確認されました。これは、SomaScan Assayによるタンパク質測定が、一時点のリスク評価だけでなく、病状変化のモニタリングにも有用である可能性を示しています。

考察

本研究は、血漿中の多タンパク質情報だけで心不全の予後を予測できることを示しました。特にHFpEFでは、従来指標を上回る予測性能が得られました。単一マーカーでは捉えにくい炎症、心筋障害、代謝、線維化など複数の生物学的変化をまとめて評価できる点が重要です。

Information

本研究においてSomaScan Assayは、予後予測モデルを構築するための中核的な測定技術として用いられました。約5,000種類のタンパク質を血漿から同時に測定できたことで、既知の心不全関連マーカーに加え、新規候補タンパク質も含むリスクスコアの作成が可能になりました。少数の既知マーカーに限定されず、疾患の複雑な生物学的変化を広く捉えられる点が、本研究成果を支えた大きな強みです。

COI:開示すべき利益相反はありません。 

Success

探索、バイオマーカーから臨床試験まで、SomaScan Assayの活用事例をまとめました。