血漿プロテオームから静脈血栓塞栓症の新たな関連分子を探る

Tang W et al. Circulation. 2026 Mar 17;153(11):810-825. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.125.074493.

研究の背景と目的

静脈血栓塞栓症は、脚などの静脈に血栓ができたり、その血栓が肺の血管を塞いだりする病気です。発症に関わる仕組みには、まだ不明な点があります。本研究では、発症前の血液中のタンパク質を幅広く調べ、将来の発症と関連する分子を探しました。

研究方法

米国とノルウェーの4研究に参加した計20,737人を、最長10~29年間追跡しました。追跡中、がんに関連しない静脈血栓塞栓症が1,371件確認されました。研究開始時の血漿をSomaScanTM Assayで測定し、約5,000種類に共通するタンパク質と発症との関係を解析しました。さらに、英国の別集団で異なる測定技術を用いて結果を検証し、遺伝情報から原因となる可能性も検討しました。

結果

最初の3研究で発症と関連し、ノルウェーの研究でも同じ方向の関連が確認されたタンパク質は23種類でした。このうち15種類は、静脈血栓塞栓症との関連が新たに示されたものです。特にトランスゲリン(TAGLN)、SVEP1、TIMP4の3種類は、ノルウェーの研究でも厳格な統計基準を満たしました。

別の測定技術を用いた英国の研究では、検証可能だった16種類のうち11種類で関連が確認されました。また、従来知られている血液凝固に関わる分子を考慮しても、多くの候補分子で発症との関連が残りました。

遺伝情報を用いた解析では、免疫に関わるTIMD4が発症に関与する可能性を支持する結果が得られました。ただし、TIMD4とTIMP4では、この解析と血漿タンパク質の解析で関連の向きが一致しませんでした。これらの分子が発症にどう関わるかは、さらなる検証が必要です。

考察

発症前の血漿には、従来の血液凝固に関わる分子に加え、免疫や血管、細胞を支える組織に関係する候補分子も見つかりました。異なる集団や測定技術で一部の結果が確認されたことは、今後の研究の手がかりになります。一方、関連が見つかっただけでは、その分子が発症の原因とはいえません。診断や発症予測、治療標的としての有用性についても、今後の検証が必要です。

Information

本研究では、SomaScan Assayは発症前に採取された血漿から多数のタンパク質を測定し、将来の静脈血栓塞栓症に関連する候補を探索する役割を担いました。がんに関連しない発症を対象に、既知の凝固関連分子に加えてTAGLN、SVEP1、TIMP4などを見いだした点は、血栓症のリスクに関わる分子や病態を調べる研究の参考になります。

COI:フォーネスライフ社はSomaScan Assayを提供・販売する立場にあるため、本記事の掲載は利益相反に該当します。

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