ネモリズマブ治療で変化するアトピー性皮膚炎の血漿プロテオーム
Nakajima S et al. JID Innov. 2026 Feb 9;6(3):100457. doi: 10.1016/j.xjidi.2026.100457.

研究の背景と目的
アトピー性皮膚炎では、かゆみや湿疹に加え、全身の免疫反応の乱れが関わります。IL-31受容体を標的とするネモリズマブは、かゆみや湿疹の改善効果が示されている治療薬です。一方、治療後に血液中のタンパク質や免疫関連経路がどのように変化するかは、十分に分かっていませんでした。本研究は、血漿プロテオームを用いてこの変化を調べました。
本研究では、VRL患者の硝子体液を網羅的にプロテオーム解析し、VRLで特徴的に変化するタンパク質や生物学的経路を明らかにするとともに、DLBCLで知られる分子学的特徴が眼内環境にも反映されているかを検討しました。
研究方法
中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者25人に、外用治療と併用してネモリズマブ60 mgを1回投与しました。投与前と投与後1、2、4、8週に血漿を採取し、治療前の患者検体を健常者10人の検体と比較しました。約7,000タンパク質をSomaScan™ Assayで同時に測定し、タンパク質量、経路解析、かゆみ・湿疹の重症度との統計学的関連を解析しました。
得られたデータからVRL群と対照群で量の異なるタンパク質を抽出し、Gene Ontology、Reactome、GSEAなどを用いて、それらが関係する生物学的機能や経路を解析しました。
結果
かゆみの指標PP-NRSは、投与1週後に平均48.5%、4週後に47.9%低下しました。湿疹の重症度を示すEASIも1週後に20.4%低下し、4週以降は約35%低下しました。
治療前の患者では、健常者と比べて統計学的に増加したタンパク質が1,181、低下したタンパク質が49ありました。IgE、TARC/CCL17などの2型炎症関連タンパク質に加え、好中球の活性化に関わるタンパク質も増加していました。経路解析では、好中球脱顆粒、インテグリン、ERK/MAPK、mTORシグナルの活性化と、PTENシグナルの抑制が示唆されました。
投与後、個々のタンパク質の変化量は全体として小さいものでした。一方、治療前に大きく変化していた246の経路の多くは、8週までに健常者の状態に近づく方向へ変化する傾向を示しました。PP-NRS、EASI、TARC/CCL17の値と統計学的に関連するタンパク質群・経路も示されました。
考察
ネモリズマブ投与後、単一タンパク質の大きな変化は限られましたが、疾患に関連する経路には健常者の状態に近づく傾向がみられました。一方、症状が改善してもTARC/CCL17やMDC/CCL22が高値を保つ、あるいは増加する例もありました。血中タンパク質の変化は複数の免疫過程を反映すると考えられ、治療反応との関係は慎重に解釈する必要があります。プラセボ対照がなく、少数の日本人患者への単回投与研究であるため、今後の検証が必要です。
COI:フォーネスライフ社はSomaScan Assayを提供・販売する立場にあるため、本記事の掲載は利益相反に該当します。


