喫煙関連血漿タンパク質スコアで、がんリスクを捉える

Ru M et al. J Natl Cancer Inst. 2026 May 1;118(5):917-925. doi: 10.1093/jnci/djag004.

研究の背景と目的

本数や喫煙年数が同じでも、煙を吸い込む深さや強さ、たばこ成分の吸収・代謝には個人差があり、体が実際に受ける影響は異なる可能性があります。本研究では、喫煙の生物学的な影響を反映する血漿タンパク質からスコアを作成し、肺がんを含む喫煙関連がんの発症・死亡との関連を調べました。

研究方法

米国ARIC研究の47~70歳10,563人を、スコア作成群と評価群に分けました。血漿中の4,697種類のタンパク質をSomaScanTM Assay(5K)で測定し、現在の喫煙、累積喫煙量、最近の禁煙と関連する116種類からスコアを作成しました。13種類の喫煙関連がんと肺がんの発症・死亡を約23年間追跡し、自己申告の喫煙歴などを考慮して解析しました。さらに、欧州EPIC研究で肺がんとの関連を検証しました。

結果

評価群5,282人では、喫煙関連がん672件、同がんによる死亡424件が確認されました。スコア最高群は最低群に比べ、自己申告の喫煙歴を考慮した後も、喫煙関連がんの発症リスクが2.28倍、死亡リスクが2.67倍でした。肺がんでは発症3.04倍、死亡4.12倍でした。欧州EPIC研究でも、肺がん発症リスクは調整後2.23倍となり、別集団でも関連が確認されました。スコアを構成する分子にはMMP12、WFDC2などが含まれ、がんリスクとの関連は、現在喫煙している人だけでなく禁煙した人でも認められました。

別の測定技術を用いた英国の研究では、検証可能だった16種類のうち11種類で関連が確認されました。また、従来知られている血液凝固に関わる分子を考慮しても、多くの候補分子で発症との関連が残りました。

遺伝情報を用いた解析では、免疫に関わるTIMD4が発症に関与する可能性を支持する結果が得られました。ただし、TIMD4とTIMP4では、この解析と血漿タンパク質の解析で関連の向きが一致しませんでした。これらの分子が発症にどう関わるかは、さらなる検証が必要です。

考察

このタンパク質スコアは、自己申告では捉えきれない喫煙の体内影響と、将来のがんリスクに関する情報を補う可能性があります。一方、現時点では研究用の指標であり、検診対象者の選定に直ちに使えるものではありません。多様な集団や他の測定法での再現性、経時変化、既存の検診基準に加える有用性を検証する必要があります。

Information

本研究でSomaScan Assayは、発症前の血漿から約4,700種類のタンパク質を一度に調べ、喫煙曝露を反映する116分子を抽出してリスクスコアを構築する役割を担いました。肺がん・喫煙関連がんの予防研究、検診対象者の層別化、禁煙後も残るリスクの評価に向けた探索段階で活用が考えられます。MMP12、WFDC2などの候補分子を含め、問診だけでは捉えにくい生物学的影響を研究する足掛かりとなります。

COI:フォーネスライフ社はSomaScan Assayを提供・販売する立場にあるため、本記事の掲載は利益相反に該当します。

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