肥満時の血液タンパク質から将来の糖尿病リスクを予測
Lim CGY et al. Diabetes. 2025 Mar 1;74(3):416-426. doi: 10.2337/db24-0184.

研究の背景と目的
肥満は2型糖尿病(Type 2 diabetes)や心血管疾患(Cardiovascular disease:CVD)のリスクを高めます。ただし、同じ体格でも「内臓脂肪の多さ」や「代謝の乱れ」の程度は人により異なるため、体格指標だけでは将来リスクを十分に捉えにくいことがあります。そこで本研究は、血液(血漿)のタンパク質を広く測定し、体格(Body mass index:BMI、腹囲)に結びつく「タンパク質の組み合わせ=血漿プロテオームシグネチャー」を作って、代謝の悪化や将来の2型糖尿病リスクとどれほど関連するかを確かめました。
研究方法
シンガポールのSingapore Multi-Ethnic Cohort Phase 1(シンガポール多民族コホート第1期:MEC1)に参加した人のうち、まず631人を対象に、体格指標である体格指数(BMI)と腹囲(Waist circumference:WC)に関連する血漿タンパク質を網羅的に探索しました。次に、説明変数を絞り込みやすい機械学習の一種であるエラスティックネット回帰(Elastic net regression:相関の強い項目が多いデータから重要な項目を選ぶ方法)で、BMI用124種、WC用125種の「血漿プロテオームシグネチャー」を作りました。別データ(2型糖尿病の症例616人+対照1,200人)で再現性を確認し、さらに米国のARIC研究(Atherosclerosis Risk in Communities:ARIC)8,428人で外部検証しました。
結果
- 作成した血漿プロテオームシグネチャーは体脂肪の実態をよく反映しました。BMIサインは全身の脂肪量、WCサインは内臓脂肪(Visceral adipose tissue:VAT)とより強く対応し、「脂肪のつき方」も捉える可能性が示されました。
- 症例対照データでは、血漿プロテオームシグネチャーの方が、血圧・脂質・血糖(HbA1c:過去1〜2か月の平均的な血糖状態)などのリスク因子と強く関連しました。さらにBMIやWCで調整しても関連が残る項目が多く、単なる体格以上の「体の中の変化」を示す指標になり得ます。
- 「代謝的に不健康な肥満(Metabolically unhealthy obesity:血圧・脂質・血糖などが悪い肥満)」の判別にも役立ち、血漿プロテオームシグネチャーが高いほど不健康側である確率が上がりました(年齢・性別・民族・BMIで調整後も)。
- 将来リスクでは、血漿プロテオームシグネチャーが高い人ほど追跡で肥満・メタボ・2型糖尿病になりやすい傾向が示されました。特にT2Dでは、WCサインが1標準偏差(Standard deviation:SD、集団内のばらつきの単位)高いごとに、症例対照でオッズ比(Odds ratio:OR)2.84、ARICでもハザード比(Hazard ratio:HR)1.98と強い関連が確認されました。
考察
BMIや腹囲は便利ですが、同じ数値でも内臓脂肪や代謝の乱れは人により異なります。本研究は、血液タンパク質の「組み合わせ」で、代謝的に不健康な肥満や将来の2型糖尿病リスクを、より生理学的に捉えられる可能性を示しました。一方で観察研究のため、原因か結果かの確定には追加研究が必要です。
COI:開示すべき利益相反はありません。
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