マルチオミクスで示すバルドキソロンメチルの抗酸化作用
Yoshioka K et al. Kidney360. 2025 Nov 1;6(11):1880-1889. doi: 10.34067/KID.0000000853.

研究の背景と目的
慢性腎臓病(CKD)や糖尿病性腎臓病では、「酸化ストレス」が病気の進行に関わると考えられています。NRF2(NF erythroid 2-related factor 2)は体内の抗酸化の働きを高める“司令塔”と考えられている因子です。NRF2を活性化する薬であるバルドキソロンメチルは、腎機能の指標(糸球体ろ過量GFR)が改善したという報告があります。一方で、人で実際に抗酸化反応がどの程度起きているかは十分に示されていませんでした。そこで本研究では、血液と尿を幅広く調べ、抗酸化反応が活性化しているかを検証しました。
研究方法
第2相TSUBAKI試験で、バルドキソロンメチルまたはプラセボを16週間投与しました。投与前、16週後、投与中止4週後に採取した血漿と尿を用いて解析しました。タンパク質はSomaScanᵀᴹ Assayで、代謝物はメタボローム解析で測定しました(解析対象:投与群45例、プラセボ群52例)。
結果
血漿(血液)のタンパク質解析では、酸化ストレスに関連する2つの経路が有意に変化しました。特に、抗酸化に直接関わるタンパク質や、抗酸化の働きを助けるタンパク質が増加しました。増加したタンパク質の一部はNRF2の標的タンパク質として知られており、「薬→NRF2→抗酸化」という想定される機序が人でも起きていることを示します。
尿のタンパク質解析でも4つの経路が有意に変化し、NRF2標的を含む抗酸化関連タンパク質の増加が確認されました。さらに尿の代謝物解析では、抗酸化作用を後押しすると考えられる代謝物が7種類増えました。つまり、血液と尿の両方で抗酸化に関わるタンパク質が増え、尿では代謝の面でも抗酸化につながる変化が同時に見られました。
考察
血漿と尿をプロテオミクス/メタボロミクスで網羅的に解析した結果、NRF2標的を含む抗酸化タンパク質や抗酸化を高める代謝物の増加が確認されました。人で抗酸化応答が起きた初の臨床的証拠と考えられ、GFR改善の背景にNRF2活性化が関与する可能性を示しました。本研究により酸化ストレスが関わる腎疾患での治療的意義を分子レベルで裏づけることができました。
SomaScanᵀᴹ Assayは、血漿や尿に含まれる多数のタンパク質を一度に測定でき、変化を「経路(体の働きのまとまり)」として捉えられる点が強みです。本研究においては、限られた検体量でも幅広く解析でき、NRF2標的タンパク質の増加といった重要な手がかりを得るのに役立ちました。
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