溶血・凍結融解がタンパク質測定に与える影響
Candia J et al. J Proteome Res. 2025 May 2;24(5):2517-2528. doi: 10.1021/acs.jproteome.5c00069.

研究の背景と目的
血液タンパク質の網羅的プロテオミクス解析は、病気の重症度や将来の発症リスクなどを予測する手がかりになりますが、採血後の溶血や凍結融解といった前処理操作により測定値が変動する可能性があります。本研究では、これら前処理の影響をSomaScanᵀᴹ AssayとOlinkで比較し、どの測定項目に注意が必要かを検討しました。
研究方法
ヒト血漿試料を用いて、基準状態のまま保存した群に加え、意図的に赤血球を壊して溶血させた群と、凍結融解を複数回繰り返した群を作成しました。各条件のサンプルをSomaScanᵀᴹ AssayおよびOlinkで同時に測定し、基準条件との濃度差を統計的に解析することで、前処理によって有意に変動するタンパク質と、その機能的な特徴を調べました。
結果
SomaScanᵀᴹ Assay(10,776項目)では、溶血により変動する群が約4%、凍結融解により変動する群も約4%と、影響は一部の項目に限られました。一方、Olink(1,472項目)では、凍結融解の影響を受けるのが約6%であったのに対し、溶血では「ほぼ半数」のプローブが有意に変動しました。
さらに、溶血で影響を受けたOlinkプローブは、他のタンパク質との結合関係を示す「タンパク質間相互作用(PPI)」の情報が多く付いている標的に偏る傾向があり、赤血球プロテオームとの関連も有意でした。対照的に、SomaScanᵀᴹ Assayで影響を受けた項目は赤血球との関連が有意ではありませんでした。著者らは各項目の影響度を補足データとして公開しています。
考察
採血後の検体の扱い方や保存条件にばらつきがあると、本来の「病気による違い」ではなく「サンプルの傷み方の違い」が測定結果に紛れ込んでしまいます。特に溶血は、赤血球由来タンパク質の混入などを通じて、多数の項目の値を変化させるおそれがあります。凍結融解も一部の項目では無視できない影響を示しました。
そのため、測定前に溶血指数などでサンプル品質をそろえ、凍結融解回数や保存条件を記録・標準化することが重要です。さらに、論文で公開された影響リストを使って要注意項目を除外し、結果がどの程度変わるかを確認することで、解釈の誤りを減らせます。
本研究においてSomaScanᵀᴹ Assayは、溶血や凍結融解の影響を受ける測定項目が比較的少なく、一度に1万種類以上のタンパク質を測定できるプラットフォームとして位置づけられています。さらに、「どの程度の溶血までなら解析に使うか」「どの項目を除外するか」といった検体の品質チェックの基準(品質管理=QC)をあらかじめ決めやすい点も特徴です。これにより、大規模な臨床研究でもサンプル品質をそろえながら解析しやすく、結果の信頼性を高められることがSomaScanᵀᴹ Assayの有用性として示されています。
COI:本論文の著者の一部は、SomaLogic社主催・共催またはOlink社主催のセミナーにおいて、無報酬で講演を行っています。
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