血液タンパク質で「臓器年齢」を推定し、病気や予後を予測する
Oh HS et al. Nat. 2023 Dec 6;624(7990):164–172. doi: 10.1038/s41586-023-06802-1.

研究の背景と目的
各臓器はそれぞれ異なる速さで老化すると考えられていますが、生きている人で臓器ごとの老化の進み具合を測る方法は限られていました。本研究では、血漿中の臓器に由来しやすいタンパク質を手がかりに、プロテオミクス解析から11臓器の「臓器年齢」を推定し、病気のリスクや予後との関係を調べました。
研究方法
本研究では5つのコホート、計5,676人の血漿タンパク質をSomaScan™ Assayで測定し、臓器ごとの「臓器年齢」を推定するモデルを作成しました。対象は一般集団(Covance)、長寿研究(LonGenity)、認知症関連の研究(Stanford-ADRC、Knight-ADRC)と、健康な加齢を追う研究(SAMS)です。
臓器由来の手がかりを作るため、GTEx(Genotype-Tissue Expression:臓器ごとの遺伝子発現データ)を使い、ある臓器で他の臓器より発現が高いタンパク質を抽出しました。
推定モデルには LASSO(多数の候補から重要なタンパク質を選び、予測式を作る統計手法)を用い、学習と検証を別コホートで行って再現性を確かめました。実年齢と推定年齢の差(年齢ギャップ)を老化指標として、疾患リスクや予後との関連を解析しました。
結果
プロテオミクス解析から、年齢ギャップは臓器間で必ずしも一致せず、同じ年齢でも「心臓の老化が目立つ人」「腎臓の老化が目立つ人」など、臓器ごとに違いが見られました。約20%の人で少なくとも1臓器の老化が著しく速く、複数臓器で同時に速い人も1.7%いました。
臓器の老化が速い人ほど、全死亡リスクが20〜50%高いことと関連しました。また心臓の老化が速い人は心不全リスクが約250%高いことが示されました。さらに、脳や血管(動脈)の老化が速いことは、血液マーカーpTau-181と同程度の強さで、かつ独立にアルツハイマー病の進行予測に関連しました。加えて、血管の石灰化、細胞外マトリックスの変化、シナプス関連タンパク質の放出などが、早期の認知機能低下と結び付く可能性が示されました。
考察
血液から臓器別の老化を「見える化」できれば、発症前のリスク把握や介入(運動・食事・治療)の効果確認に役立ちます。どの臓器を優先してケアすべきかを個人ごとに示せる点は予防医療に有用です。一方で観察研究のため因果は断定できず、集団が異なる場合の外部検証や、経時変化を追う研究、臨床で使える判定基準づくりが課題です。また、臓器年齢の変化がアウトカム改善につながるかの検証も必要です。
本研究ではSomaScan™ Assayを主たる測定手法として、血液から多数のタンパク質を一度に測定し、臓器に由来しやすいタンパク質(品質管理後で約18%)を含むデータを機械学習解析に用いました。少量の血液で多臓器の分子情報を同時に得られるため、MRIや組織採取に比べて低侵襲で、大規模な検証に向く方法です。
COI:開示すべき利益相反はありません。
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