血漿プロテオミクスから「臓器の生物学的年齢」を推定

Oh HS et al. Nat Med. 2025 Aug;31(8):2703-2711. doi: 10.1038/s41591-025-03798-1.

研究の背景と目的 

加齢は臓器の働きを弱め、慢性疾患や死亡リスクを高めます。ただし、老化の進み方は臓器ごとに同じではありません。本研究は、血液中の多数のタンパク質情報から11臓器の「生物学的年齢(同年代平均との差)」を推定し、生活習慣の影響や将来の病気、死亡リスク、長寿との関係を大規模に検証しました。 

研究方法 

UKバイオバンクに保存された44,498人の血漿プロテオーム(2,916タンパク質)を用いました。遺伝子発現データをもとに、各臓器に由来しやすいタンパク質群を選びました。次に、機械学習(LASSO)で「タンパク質から暦年齢を推定するモデル」を臓器別に作成しました。予測年齢と実年齢の差(年齢ギャップ=予測年齢−実年齢)を標準化し、将来の疾患発症(最長17年追跡)や死亡との関連を統計解析(Cox回帰)で評価しました。 

結果 


・臓器別の年齢ギャップは、臓器間での相関が弱く、「どの臓器が相対的に老けている/若いか」を分けて捉えられました。 

・年齢ギャップは将来の疾患発症と強く結び付きました。具体例として、心臓が老けているほど心房細動や心不全のリスクが高く、肺が老けているほど慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリスクが高いなど、臓器に対応した関連が見られました。 

・脳の年齢ギャップはアルツハイマー病と特に強く関連しました。脳が「特に老けている」群は発症リスクが約3.1倍、「特に若い」群は約0.26倍で、APOE遺伝子型の影響を調整しても独立に成り立ちました。 

・複数臓器が同時に老けているほど死亡リスクは段階的に上昇しました。老けた臓器が2~4個で約2.3倍、5~7個で約4.5倍、8個以上で約8.3倍でした。 

・生活習慣とも連動し、喫煙・飲酒・不眠などは複数臓器の「老け」と、運動や魚の摂取などは「若さ」と結び付く傾向が示されました。 

・長寿との関係では、脳と免疫系が「若い」人ほど死亡リスクが低く、両方が若い群は約0.44倍でした。 

考察 

血液タンパク質から臓器別の「老け/若さ」を見分けることで、将来の病気や死亡リスクを早い段階で捉えられる可能性が示されました。特に、脳と免疫系の若さが長寿と結び付いた点は、健康寿命を延ばすために注目すべきポイントを考えるうえで重要です。一方で、因果関係をはっきりさせるには、介入研究や縦断データのさらなる充実が必要です。 

先行研究ではSomaScan™ Assayを用いることで「臓器年齢推定」の枠組みが提案されました(Oh, HS et al. Nat. 624, 164–172 (2023))。本研究はその考え方を大規模コホートと別プラットフォーム(Olink)で検証したものです。同一サンプルでOlinkとSomaScan™ Assayの臓器年齢を比較すると中等度の相関が認められましたが、脳などでは捉える生物学が一部異なり、両者は「補完的」になり得ることが示されています。 SomaScan™ Assayは、血液から一度に数千規模のタンパク質を幅広く測定できます。そのため、臓器由来タンパク質を多面的に捉え、臓器別の老化モデルの構築、再現性評価、新規バイオマーカー探索を加速できる点が有用です。 

COI:開示すべき利益相反はありません。 

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