母体血漿プロテオームから出生体重を捉える縦断・大規模プロテオーム研究

Andresen IJ et al. J Proteome Res. 2025 Jul 4;24(7):3247-3260. doi: 10.1021/acs.jproteome.4c00940. 

研究の背景と目的 

SGA(Small for Gestational Age:在胎週数に対して小さい児)や、LGA(Large for Gestational Age:在胎週数に対して大きい児)として生まれる新生児は、分娩時や将来の健康リスクが高く、出生前に体重をより正確に見積もる指標が求められます。超音波による推定には誤差が出ることがあるため、母体血中のバイオマーカー探索が重要です。本研究は、妊娠中の母体血漿タンパク質から出生体重(群・zスコア)に関連する指標と予測モデルを検討しました。 

研究方法 

妊婦70人を対象に、妊娠12–19週・21–27週・28–34週の3回採血しました。母体血漿タンパク質はSomaScan™ Assay(v4.0)で測定し、4,979タンパク質のうち品質管理後に4,565タンパク質を解析しました。 

データは外れ値で結果が左右されないよう調整し、分布の偏りをならして比較しやすくするため対数変換(log2 transformation:2を底とする対数変換)を行いました。さらに妊娠週数による生理的変動を「体重差」と取り違えないよう、MoM(Multiple of the Median:中央値に対する倍率)で週数差を補正しました。 

全体傾向は主成分分析で俯瞰し、出生体重群(LGA/SGA vs AGA〔Appropriate for Gestational Age:在胎週数相当児〕)の予測には、過学習を抑えつつ特徴量を選べるelastic netと、複雑な関係も捉えやすいrandom forestを用い、LOO-CV(Leave-One-Out Cross-Validation:1例除外交差検証)で評価しました。加えて、群間差はlimma(Linear Models for Microarray Data:線形モデルに基づく差の検定手法)で解析し、出生体重zスコアとの回帰と、関連する生体反応を整理するGO解析(Gene Ontology analysis:遺伝子オントロジー解析)も行いました。 

結果  

LGA予測

母体血漿タンパク質からLGA(在胎週数に対して大きい)を見分けられるかを検討したところ、20タンパク質に絞ったrandom forestで、妊娠12–19週、21–27週、28–34週の全時点でAUCが0.80以上(0.85/0.86/0.80)となり、出生前からLGAの兆候を捉えられる可能性が示されました。 

SGA予測

SGA(在胎週数に対して小さい)は全体として予測精度が低めで、良好なモデルは限定的でした。 

群間差(LGA vs AGA)

LGAでは148タンパク質が有意に高値となり、関連する生体反応として骨形成(骨化・骨芽細胞分化)やWntシグナルが目立ちました。胎児成長に関わる分子の変化が母体血に反映されている可能性があります。 

群間差(SGA vs AGA)

有意差は4タンパク質にとどまり、差が小さい可能性に加え、症例数などによる検出力の限界も議論されています。 

出生体重zスコアとの関連

出生体重を連続値としてみる回帰解析では、550タンパク質がzスコアと関連しました。妊娠後期ほど関連タンパク質数は多い一方で、妊娠初期(〜19週)でも相関が強いタンパク質があり得ることが示されました。 

考察 

母体血漿の多タンパク質情報は、超音波だけでは見えにくい「成長の背景」を補う手がかりになります。妊娠初期からLGAの兆候を捉えられれば、生活指導やモニタリング強化など早期介入の検討につながります。ただしLGA/SGAの症例数が少なく偏りもあるため、より大規模な前向き検証が不可欠です。 

本研究でSomaScan™ Assayは、妊娠血漿から約5,000規模(4,979)のタンパク質を一括で測定できる探索(ディスカバリー)基盤として位置づけられています。高ダイナミックレンジで高・低濃度タンパク質を幅広く捉えやすく、ELISA(同時測定数が限られる)や質量分析(低濃度の定量が不安定になり得る)と比べて探索研究で有利と述べられています。 現在、フォーネスライフ株式会社では、最大約11,000種類のタンパク質解析が可能なSomaScan™ 11K Assayも提供しています。  

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