疫学研究における大規模プロテオミクスの信頼性:SomaScanTM AssayとOlink比較
Haslam DE et al. Proteomics. 2022 Jul;22(13-14):e2100170. doi: 10.1002/pmic.202100170.

研究の背景と目的
血中プロテオームの解析は、病気の診断や将来のリスク予測に役立つ可能性があります。一方、疫学研究では「採血直後の検体処理が難しい」「長期間保存した検体を使う」など、測定値がぶれやすい条件が起こり得ます。そこで本研究では、SomaScan™ AssayとOlinkで測定したタンパク質が、①同じ検体を繰り返し測っても同様の値になるか(再現性)、②採血後の処理遅れ(最大48時間)の影響を受けにくいか(安定性)、③同一人物で1年後も値が安定しているか(個人内安定性)、④両プラットフォームで同じタンパク質を測った場合にどの程度一致するか、を検証しました。
研究方法
看護師・医療職の大規模コホート等の保存血漿を用い、(1)同一検体を匿名化して繰り返し測定し、再現性を評価、(2)採血後に「即時/24時間後/48時間後」で処理した場合の影響評価、(3)同一人物の1年後の再現性(Olinkでは10年後も追加評価)を行いました。
評価指標として、順位の一致を見るSpearman相関と、個人差に対する測定のぶれを評価するICC(級内相関係数)を用いました。測定対象は、SomaScan™ Assayが7,322プロテオフォーム(6,596タンパク質)、Olinkが972タンパク質です。
結果
測定の再現性
測定対象のタンパク質のうち、繰り返し測定による値のぶれが小さく(CV<20%)、安定して測定できると判定された割合は、SomaScan™ Assay 97%、Olink 99.7%で、どちらも高い再現性が確認されました。
処理遅延(最大48時間)の影響
採血後の処理が遅れても「非常に安定(ICCまたはSpearman r ≥0.75)」だった割合は、SomaScan™ Assay 44%、Olink 55%でした。さらに「一定の安定(≥0.40)」まで広げると、SomaScan™ Assay 72%、Olink 87%でした。つまり多くのタンパク質は保たれる一方で、処理遅れの影響を受けやすいタンパク質も一定数あります。
また、SomaScan™ Assayでは、EDTAで保存した検体について「48時間遅れ」の相関中央値(r=0.26)が「24時間遅れ」(r=0.54)より低い傾向が示されました。
同一人物での1年安定性
遅延処理で不安定(<0.40)な測定などを除いたうえで、1年後でも「≥0.40」の安定性を示した割合は、SomaScan™ Assay 91%、Olink 92%でした。1回の採血でも、その人の傾向をある程度捉えられる可能性が示唆されます。
SomaScan™ AssayとOlinkの一致
両方で測定された817タンパク質のSpearman相関中央値は0.45で、よく一致(r>0.75)が14.7%、中程度(0.40–0.75)が40.5%、一致が弱い(r<0.40)が44.8%でした。
同名タンパク質でも、測っている部位(エピトープ)やタンパク質の形(アイソフォーム等)の違いが影響し得るため、プラットフォーム間の単純な置き換えは注意が必要です。
考察
本研究は、疫学研究で起こりやすい処理遅れや長期保存検体においても、両プラットフォームの高多重タンパク質測定が概ね再現性・安定性を保つことを示しました。一方で、処理遅れの影響はタンパク質ごとに差があり、また両プラットフォーム間の一致も一様ではありません。研究目的に応じて、前処理条件の管理と重要タンパク質の確認が重要です。
本研究におけるSomaScan™ Assayの位置づけは、疫学コホートのように処理遅れや長期保存が起こり得る検体で、数千規模のタンパク質を一括測定し、安定性・再現性を定量評価するための高スループット基盤です。SomaScan™ Assayは測定範囲が広く(7,322プロテオフォーム/6,596タンパク質)、探索的に候補バイオマーカーを見つけやすい点が強みです。さらに1年後でも9割超が一定の安定性(≥0.40)を示しており、集団研究での長期評価に活用できる可能性を支持します。
COI:開示すべき利益相反はありません。
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