Fontan循環を有する成人の血漿プロテオーム:SomaScanᵀᴹ AssayとOlinkの一致度

Assi IZ et al. Int J Cardiol Congenit Heart Dis. 2025 Apr 15;20:100584. doi: 10.1016/j.ijcchd.2025.100584. 

研究の背景と目的 

先天性心疾患の手術後にみられる特殊な血流状態であるFontan循環では、さまざまな合併症が起こり得る一方で、詳しいメカニズムは十分に分かっていません。多数のタンパク質を一度に測定できるSomaScan™ AssayやOlinkによるプロテオミクスは、新しい手がかりを得る方法として期待されています。しかし、Fontan循環を有する患者で、SomaScan™ AssayとOlinkの測定結果がどの程度一致するかは十分に検証されていませんでした。本研究では、Fontan循環を有する成人において、両プラットフォームの測定値の相関(同じ傾向を示すか)を評価しました。

研究方法 

ボストン小児病院およびブリガム・アンド・ウィメンズ病院で運用されているBoston Adult Congenital Heart Disease Biobankに、2012〜2017年に登録されたFontan循環を有する成人(>18歳)71名の血漿を用いました。血漿タンパク質はSomaScan™ AssayとOlink(複数パネル)で測定し、両者で共通して測定できた491タンパク質について、Spearmanの順位相関係数(ρ)で一致度を算出しました。また、NT-proBNP、シスタチンC、GDF15、ST2は臨床検査(免疫測定法/ELISA)とも相関を確認しました。 

※両プラットフォームの測定は、同一採血由来の血漿を小分けしたもので実施。 

結果


対象背景

平均年齢29±7歳、女性48%でした。  

臨床検査との一致

OlinkとSomaScan™ Assayは、同じタンパク質名の注釈(アノテーション)が付いていても、実際には結合部位や検出対象(タンパク質の“形”)が異なる可能性があります。そこで本研究では、値そのものの一致より「臨床検査で測った各マーカーの血中濃度(例:NT-proBNPなど)が高い人ほど、各プラットフォームでもそのマーカーの測定シグナルが高い傾向にあるか」という検体ごとの順位の一致を、Spearmanの順位相関係数(ρ)で評価しました(外れ値の影響を受けにくく、単位やスケールが違っても比較しやすい指標)。その結果、4項目(NT-proBNP、シスタチンC、GDF15、ST2)では、SomaScan™ Assay、Olinkいずれも臨床検査との相関が強めで、ρはすべて0.618以上でした。項目ごとに相関の強さは異なり、NT-proBNPはSomaScan™ Assayの方が相関係数が高い一方、他の一部項目ではOlinkが高い傾向でした。  

SomaScan™ AssayとOlinkの一致(491タンパク質)

同じ参加者の血漿で得られた各タンパク質の測定値(人ごとの高低)が、両者でどれだけ同じ傾向になるかをSpearmanのρで評価しました。中央値はρ=0.457で、491種類のうち「真ん中のタンパク質」では中等度に順位が一致することを意味します。一方でばらつきは大きく、第1四分位0.113〜第3四分位0.651でした。ρ>0.4のタンパク質は57.2%で、負の相関(片方で高いほどもう片方で低い傾向)は79タンパク質で見られました。  

相関の具体例

相関が特に高かった例としてFGF-19、レプチン、CA6が挙げられました。一方、HSP27、DIABLO、SOD2は相関が低い側でした。なおDIABLOでは、Olinkで検出限界未満となった検体が多かった(71検体中47検体)ため、この点が相関の低さに影響している可能性があります。 

Olinkパネル別の傾向

同じ491タンパク質でもパネルによって、SomaScan™ Assayとの相関の強さに違いが見られました。具体的には、発生・成長に関わるタンパク質群を中心に収載した「Development(発生・発達)」パネルは相関が比較的高い一方、細胞内の制御(シグナル伝達や細胞周期など)に関わるタンパク質群を中心に収載した「Cell Regulation(細胞制御)」パネルでは相関が低い傾向でした。 

性差(男女差)で変わるタンパク質

両プラットフォームは、ミオスタチン(GDF8)とレプチン(LEP)の性差を共通して検出しました。一方で、有意な性差タンパク質の数はOlinkの方が多く(Olink 16、SomaScan 7)、一致しない部分もありました。  

考察 

両プラットフォームの一致は全体として中等度で、タンパク質ごとの差が大きい点が重要です。探索研究として傾向をつかむ用途には有用ですが、臨床判断に直結させるには、ELISAや質量分析など別法での確認が欠かせません。Fontan循環の病態解明には「まず広く拾い、重要候補を検証する」流れが現実的です。 

本研究でSomaScan™ Assayは、Olinkと並ぶ“ハイスループット血漿プロテオーム測定”として用いられ、Fontan循環という特殊集団でも一定の妥当性(臨床検査との相関、性差検出、他コホートと似た相関分布)を示しました。 SomaScan™ Assayは、少量検体から多数タンパク質を同時に測り、病態の手がかり候補を広く抽出できる点が強みです(仮説生成に向く)。一方で、タンパク質ごとに測定特性が異なり得るため、重要候補は独立した検証法で裏取りする、という位置づけが適切です。 

COI:開示すべき利益相反はありません。 

SomaScanTM Assay についてご依頼、お見積り、技術的な説明、営業説明を希望される方はこちらをクリックください。