大規模血漿プロテオーム解析におけるSomaScanᵀᴹ AssayとOlinkの比較
Eldjarn GH et al. Nat. 2023 Oct 4;622(7982):348–358. doi: 10.1038/s41586-023-06563-x.

研究の背景と目的
血液プロテオミクス技術(血液中の多数のタンパク質をまとめて測る技術)は、遺伝子と病気のつながりを理解する手がかりになります。一方で、測定プラットフォームが異なると「同じタンパク質」を測っているつもりでも結果が変わる可能性があります。本研究では、SomaScanᵀᴹ Assay(version 4.0:4,907アッセイ、アイスランド35,892人)とOlink(Olink Explore 3072、UK Biobankで5万人超。解析では主に英国・アイルランド系46,218人などに層別)のデータを用い、測定値の一致度、遺伝学的関連(pQTL:タンパク質量に影響する遺伝子座)、疾患との関連で比較し、結論への影響を明らかにすることを目的としました。
研究方法
アイスランド約3.6万人のSomaScanᵀᴹ Assayデータと、UK Biobank約5万人のOlinkデータ(祖先集団別解析を含む)を用い、
- 再現性(同一試料の繰り返し測定のばらつき)、
- 両者で同一試料を測定した1,514人での測定値相関、
- 遺伝子変異とタンパク質量の関連(cis/trans pQTL)、
- 疾患や体格などの表現型との関連
を比較しました。
結果
測定の安定性(ばらつきの小ささ)
繰り返し測定のばらつき(CV)は、全体としてSomaScanᵀᴹ Assayの方が小さく、中央値でSomaScanᵀᴹ Assayが9.9%に対し、Olinkが16.5%でした。共通ターゲット(両者で測っているタンパク質)に絞っても、SomaScanᵀᴹ Assayが9.5%、Olinkが14.7%で、Olinkのばらつきが大きい傾向にありました。
同じ試料を測っても一致は「ほどほど」
両プラットフォームで同一個人(1,514人)を測ったところ、対応する1,848タンパク質の測定値相関(Spearman)の中央値は0.33で、強い一致ではありませんでした。
“測れている確からしさ”の手がかり(cis pQTL)
遺伝子近傍の変異(cis pQTL)が見つかることは、狙ったタンパク質を捉えている可能性を示す一つの根拠になります。cis pQTLが見つかったアッセイ数はSomaScanᵀᴹ Assayが 2,120、Olinkが2,101でした。
病気との関連は、プラットフォームで結論が変わり得る
例としてアルツハイマー病では、NEFL(NFL)が両者で強く関連しましたが、関連の向きが逆でした(同じ名前でも、捉えている“形(プロテオフォーム)”が違う可能性が示唆されます)。
また炎症性腸疾患(IBD)について、IL-10はSomaScanᵀᴹ Assayで疾患リスク変異と整合的なcis pQTLが検出されませんでしたが、Olinkでcis pQTLが検出されました。またIL-10のELISA測定値との相関は、SomaScanᵀᴹ Assayでは低い(r=0.04)一方、Olinkで高い(r=0.81)ことが示されました。
対照的にIL2RBでは、SomaScanᵀᴹ Assayでcis pQTLが検出された一方、Olinkではcis pQTLが検出されず、両者の測定値の相関も弱い(r=0.14)結果でした。加えてOlinkでは、IL2RBの測定値が検出限界(LOD)未満となる割合が高い(79%)ことが報告されました。
結論
両者は多目的で使われますが、測れているタンパク質(またはその形)が一致しない場面があり、遺伝学・疾患研究では「どのプラットフォームを使うか」が結果の解釈を左右し得る、とまとめています。
考察
両プラットフォームは大規模解析を可能にしますが、同一タンパク質でも測定値相関が高くない例が多く見られます。そのため、遺伝学的裏づけ(cis pQTL)の有無や、ELISAなど別法での確認が解釈の助けになります。目的に応じて、単独利用だけでなく相補的に使う設計が結果の確度を上げます。
本研究でSomaScanᵀᴹ Assayは、約3.6万人規模で4,907アッセイ(4,719タンパク質)を測る基盤データとして、Olinkと並ぶ「大規模プロテオミクス×遺伝学」解析の中核データになっています。 有用性としては、(1)測定対象の広さ、(2)繰り返し測定のばらつきが小さい傾向、(3)プラットフォーム差から“異なるプロテオフォームを捉えている可能性”が見え、疾患機序やバイオマーカー探索の追加の手がかりになり得る点が示されました。
COI:開示すべき利益相反はありません。
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