血漿プロテオミクス8手法の比較研究 

Kirsher DY et al. Commun Chem. 2025 Sep 25;8(1):279. doi: 10.1038/s42004-025-01665-1. 

研究の背景と目的

血漿中タンパク質は病気の手掛かりになりますが、濃度の幅が非常に大きく、「どの測定法が何に強いのか」が分かりにくいのが現状です。本研究では、アプタマー(核酸プローブ)を用いるSomaScanTM(7K/11K)Assayを代表的アフィニティ法として位置づけ、同一の検体を用いて8手法を直接比較しました。 

研究方法 

健康成人78人(18–22歳:38人、55–65歳:40人、男女同数)の血漿を、SomaScanTM 7K/11K Assay、Olink 3K/5K、NULISA、質量分析(MS)の網羅型2法(ナノ粒子濃縮、主要高濃度タンパク質の除去)、および標的MS(内部標準を用いた絶対定量の参照)で測定しました。各手法について、検出数、再現性(ばらつき)、欠測の割合、手法間の一致度、バイオマーカーの網羅性などを比較しました。 

 結果

8手法の合計で13,011種類のタンパク質を同定しました。検出数はSomaScanTM 11K Assayが9,645、SomaScanTM 7K Assayが6,401で最も多く、網羅型MS(ナノ粒子法)は5,943でした。8手法すべてで共通に測定できたのは36種類のみで、各手法が「その手法でしか拾えない」タンパク質を多く含むことが分かりました。再現性(ばらつき中央値)はSomaScanTM Assayが最も高く、ばらつき(中央値)は7Kで5.8%、11Kで5.3%でした(数値が小さいほど安定です)。測定値の欠測が少ない点でもSomaScanTM Assayが優れており、検出できた割合は約96%(11K 96.2%、7K 95.8%)でした。一方、Olink 5Kは35.9%と低めでした。臨床で使われるFDA承認バイオマーカー217種のカバー率は、SomaScanTM 11K Assayが88%で最も高く、SomaScanTM 7K Assayは76%、網羅型MSは73%、Olink 57%でした。手法間の一致度は全体として中程度で、標的MSとの相関はOlink 3Kが最も高く0.62でした。さらにApoEの型(アイソフォーム)別測定では、SomaScanTM Assayの型別アッセイが型に特異的ではない可能性が示されました。これに対し、MSで得たApoE4特異的ペプチドは、NULISAのApoE4測定とよく一致しました。 

考察

SomaScanTM Assayは広い範囲を高い再現性と低い欠測で測定できるため、候補を広く拾う「探索(候補出し)」に特に有用です。一方、アフィニティ法は結合の性質により、型や修飾の違いで測定対象がずれ、解釈が変わる場合があります。そのため、MS(とくに標的MSによる絶対定量)での確認が重要です。本研究は、同一検体での直接比較により、研究目的に応じて複数手法を組み合わせるべき理由を具体的に示しました。 

本研究は血漿プロテオミクス分野における各技術の特性と限界を明確にするとともに、SomaScanTM Assayが広い範囲での高い再現性と低い欠測で測定できるため、候補を広く拾う「探索(候補出し)」に特に有用であることを示しました。 

COI:開示すべき利益相反に該当する項目はありません。 

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