KREX技術を応用した自己抗体マイクロアレイによる非小細胞肺癌免疫療法関連バイオマーカーの同定

非小細胞肺癌(NSCLC)に対する免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)を含む化学免疫療法は、生存期間の延長をもたらす一方で、奏効率が限定的であり、また免疫関連有害事象(irAEs)が頻発するという課題があります。既存のバイオマーカー(PD-L1発現やTMBなど)では治療効果やirAEsのリスクを十分に予測できません。本研究の目的は、i-Ome™︎のKREX技術を応用した自己抗体マイクロアレイにより、irAEsの重症度や免疫療法効果を予測する新規バイオマーカーを探索することです。

対象は2019年3月から2025年2月までに中国・同済医科大学付属協和医院で化学免疫療法を受けた未治療NSCLC患者114例です。これを訓練コホート(83例)と検証コホート(31例)に分け、治療前と2サイクル後の血清サンプルを収集しました。irAEsの評価はCTCAE v5.0に基づき、治療効果はRECIST 1.1基準により判定しました。

研究チームは、自己免疫疾患関連抗原125種類を搭載したAIDマイクロアレイをKREX技術に基づき開発し、患者血清中の自己抗体(IgGおよびIgA)を高感度かつ再現性高くプロファイリングしました。アレイの再現性は非常に高く(intra-batch相関0.99、inter-batch相関0.97)、従来の化学発光免疫測定法とも強い相関(R²=0.86)を示しました。統計解析にはサンプルラベルを考慮した非パラメトリック手法(SAMR)やROC解析を用い、irAEsや治療効果との関連を評価しました。

irAEs関連バイオマーカー:9種類の自己抗体(例:anti-Ku IgG, anti-NAP1L4 IgG, anti-PLP1 IgA/IgGなど)がirAEs重症度と有意に正の相関を示し、これらを組み合わせた「9抗体パネル」はirAEsの発症(AUC=0.854)、特に重症irAEs(G3)の予測(AUC=0.934)に高い性能を示しました。

治療効果関連バイオマーカー:8種類の自己抗体(例:anti-GLRA2 IgA, anti-KRT20 IgA, anti-MBP IgAなど)が免疫療法の奏効と関連し、「8抗体パネル」により治療応答の予測が可能となりました(訓練コホートAUC=0.855、検証コホートAUC=0.746)。特にanti-GLRA2 IgAやanti-KRT20 IgAは予後良好因子として機能しました。

予後因子:Cox回帰解析により、anti-NAP1L4 IgGやanti-Ku IgGは有害事象と予後不良に関連し、逆にanti-GLRA2 IgAやanti-KRT20 IgAは防御的効果を示しました。

本研究で用いたi-Ome™︎のKREX技術は、抗原構造の保持に優れた独自のプロテオミクス基盤であり、従来法では困難であった多種自己抗体の同時・高精度検出を可能としました。この技術により、免疫療法関連の毒性や治療効果を予測する新規自己抗体バイオマーカー群を同定でき、個別化医療の実現に大きく貢献しました。