ビーガン食vsケトジェニック食:免疫・腸内環境・代謝は短期間でどう動く?
Link VM et al. Nat Med. 2024 Jan 30;30(2):560–572. doi: 10.1038/s41591-023-02761-2.

研究の背景と目的
食事は健康に影響しますが、「どんな食事が免疫の働き方をどう変えるのか」は十分に分かっていません。そこで本研究は、管理された環境でビーガン食とケトジェニック食を短期間摂取したときに、免疫・腸内細菌・代謝・血中タンパク質がどう変わるかを多面的に調べました。
研究方法
米国のNational Institutes of Health(NIH)Clinical Centerに入院した成人20名を対象に、2週間ずつビーガン食(低脂肪)とケトジェニック食(低炭水化物)をランダムな順番で摂取するクロスオーバー試験を行いました。評価は多面的で、血漿タンパク質は SomaScan™ Assayで約1,300種類を解析しました。なお、検体の都合により、すべての解析が全員に行われたわけではありません(例:SomaScan™ Assay はn=20、腸内細菌はn=10、RNA-seqはn=6、フローサイトメトリーはn=7)。
結果
免疫(血液中の免疫細胞と遺伝子発現)
血液中の免疫細胞の種類や割合、免疫関連遺伝子の発現パターンの解析を行ったところ、ケトジェニック食ではT細胞・B細胞などに関連する獲得免疫の反応が強まる方向の変化が見られました。一方、ビーガン食では自然免疫や抗ウイルス反応(I型インターフェロンなど)に関わる反応が強まる方向の変化が示されました。
血漿タンパク質(SomaScan™ Assay)
血漿中の約1,300種類のタンパク質を一括測定し、食事介入前(ベースライン)や介入後の値を比較しました。その結果、ケトジェニック食のほうが変動するタンパク質が多く、統計解析では、
- ベースライン vs ケトジェニック食:107タンパク質が有意に変動
- ビーガン食 vs ケトジェニック食:137タンパク質が有意に変動
- ベースライン vs ビーガン食:21タンパク質が有意に変動
と報告されています。
腸内細菌(便由来メタゲノムから推定される「機能=代謝経路」)
便に由来する腸内細菌のメタゲノムを解析し、腸内細菌がもつ酵素や代謝経路を推定したところ、ケトジェニック食では腸内細菌の遺伝子発現量が全体として低下し、多くの代謝経路が低下しました。特に、アミノ酸(12経路)やビタミン合成(9経路)に関わる経路の低下が目立ちました。
代謝物(血液・尿のメタボロミクス、特に脂質の変化)
血漿や尿中の代謝物をメタボロミクスで測定し、食事間で量が変わる物質を比較しました。血漿では、ビーガン食とケトジェニック食の間で185/859の代謝物が有意に変化し、脂質が大きな割合を占めました。さらに脂質の「質」も異なり、ケトジェニック食では飽和脂肪酸を含む脂質が増える一方、ビーガン食では不飽和脂肪酸を含む脂質が増える傾向が示されました。
統合解析(タンパク質×代謝物×腸内細菌機能のつながりをネットワーク化)
SomaScan™ Assayで測ったタンパク質、メタボロミクスで測った代謝物、メタゲノムから推定した腸内細菌の酵素・代謝経路を統合し、互いの関連をネットワークとして解析しました。タンパク質・代謝物・腸内細菌(酵素)のデータは互いに関連し、ネットワークでは免疫・アミノ酸・脂質に関わる要素が中心として描かれました。
考察
2週間という短期間でも、食事は免疫の「働き方の方向性」を変え得ることが示されました。ケトジェニック食は獲得免疫寄り、ビーガン食は自然免疫・抗ウイルス寄りの変化が観察され、腸内細菌や代謝の変化とも連動していました。一方で本研究は対象人数が少なく、さらに食事の切り替えに洗い出し期間(wash-out)がありませんでした。長期的な影響や一般化には、より大規模で長期間の研究が必要です。
本研究でSomaScan™ Assayは、マルチオミクスのうち、とくに「血漿タンパク質」を幅広く一度に測る役割を担いました。約1,300種類のタンパク質をまとめて捉えることで、どの生体反応(免疫・代謝・臓器由来の変化)が食事で動くのかを俯瞰でき、他のデータ(代謝物・腸内細菌・免疫細胞)との統合解析にもつながりました。免疫細胞、腸内細菌、代謝物など他のデータと組み合わせることで、変化のつながり(ネットワーク)まで見渡せ、仮説探索(候補の洗い出し)に強い点が有用です。
COI:開示すべき利益相反はありません。
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